「やけど」とは日常生活の中でありふれた外傷であり、誰でも一度は「やけど」を経験したことがあるでしょう。しかし、その大部分の「やけど」は非常に軽症のものです。
重症な「やけど」では外見的な瘢痕だけでなく、関節の拘縮などQOLを低下させる後遺症を残すことがあります。さらに重篤な「やけど」は命を失ってしまうこともあるのです。
1.1熱傷の重症度
熱傷はその程度によっていくつかの分類があります。
① 熱傷の深さ
皮膚は、一番深いところには皮下組織があり、その上に真皮、表皮の3層構造になっています。熱傷によるダメージがどの深さに達するかによって重症度を測ります。
・Ⅰ度熱傷:表皮のみの熱傷で、瘢痕を残しません。
・Ⅱ度熱傷:浅達性では水疱が形成され、真皮が発赤しますが一般的に瘢痕は残りません。
深達性では、水疱形成され、真皮の血行が失われ白くなります。
瘢痕を残すことがあります。
・Ⅲ度熱傷:皮膚全層の壊死を生じます。植皮を行わないと瘢痕や拘縮が生じます。
② 熱傷の範囲
熱傷の広さによる分類です。一般的に、範囲が広いほど重症といえます。
主に用いられるのは、Burn Index(BI)という指標で、全身のⅡ度熱傷とⅢ度熱傷の面積が全身の何%かを示します。BIが10~15%以上を重症と考えます。
1.2重症な熱傷
深達性Ⅱ度熱傷やⅢ度熱傷、またBIが10%以上の熱傷は重症熱傷に分類されます。
しかし、体表面に熱傷がなくても、生命に危険を及ぼす熱傷があります。
それを気道熱傷といい、火災や爆発などによる高熱の煙や水蒸気などを吸い込んで
しまい、咽・喉頭、気管の粘膜や肺胞を損傷してしまうことです。
気道熱傷では、気道に浮腫が生じ、生命維持に必要な呼吸が十分に行えなくなる
時があります。このような場合には早期に適切な治療を開始しなければ死に至ること
もある恐ろしい外傷です。
「やけど」といえども、重症な熱傷では生命に関わることや、一命をとりとめても
運動障害を残すこともあります。ですから治療開始と同時に、治療終了後まで長期に
わたってのリハビリテーションが必要となります。特に外見面で大きな瘢痕が残った
患者は精神的に不安定になることが多く、患者との良好なコミュニケーションも大切
な要素となります。
後編「2. 熱傷リハビリテーションの実際」
「3. リハビリテーションに関わる皆さまへ」に続く
(文責:医師 成田亜希子)
国立大学医学部を卒業後、僻地の医療に従事。一般内科医として多くの患者さんを診療。
衛生研究所での勤務経験もあり、細菌学や感染症にも精通しています。
二児の母でもあり、仕事と育児に奮闘中。
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