――理学療法士を目指したきっかけ、エピソードを教えてください。
今思えば、小学校の低学年の時でしょうか。詳しい文脈は忘れましたが、担任の40代の女の先生が「膝が痛い」ということを話していた時に、私が「大きくなったら先生の膝を治してあげる」という様なことを言ったことを覚えています。そんな、人の身体を治すという意識が小さな時からあったのかもしれません。
なんと、小学生の頃からですか!
とても早い段階から、人の身体を治すことに関心を抱かれていたのですね。
一番大きなきっかけは、中学三年生の冬に、義兄が仕事中に手首から下を切断したことです。幸いに再接着術の手術を受け、神経、血管が繋がり、少し指が動くようになりました。
――専門とされる「身体のコンディショニング」に着目した理由、エピソードを教えてください。
30年以上も理学療法士をやってきた中で、数多くの研修会に参加してきました。研修会の中で、よく健常者同士で治療実習を行います。講師の先生の特殊な技術をパートナーにやってみると、身体の反応に大きな変化が生じて仰天し、感動しました。
ところが、その思いを持ちつつ職場に帰り、自分が担当している患者さんに実施しても、研修会で感動したような身体反応の変化は生じなかったのです。
学んだとおりの方法で適切に実施しているのに、と。臨床に関わる方から、よく伺う経験ですね。
ずっと、自分の技術の未熟さが原因だと考えていました。そんなことをしている内に、学んだ技術がお蔵入りするなんてことが良くありました。そんな経験を重ねている中で、ふっと閃きました。
「そうだ、同じことをやっても健常者と患者さんではコンディションが違うから、結果が違うのは当たり前ではないか」ということに気づきました。
言われれば当たり前ですが、意外に気づかず、学んだ技術をそのまま適応している人も少なくないのではないでしょうか。そんなことから、学んできた治療技術もさることながら、患者さんの身体のコンディションを捉える事の大切さを考え始めました。
私は特に、理学療法士になった頃から徒手療法を学び、筋肉について触察、表面解剖、そして筋肉が原因で生じる痛みの治療に関心があったので、治療刺激の入力場所である筋のコンディショニングについて注目してきました。
(次回に続く)
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