【コラム】医療現場のアンガーマネンジメント~クライエントと向き合う際の感情コントロール~:3

2 怒りがもたらすものとは(続き)

逆切れをする、もしくは攻撃的な自己主張をする方への対応で覚えておくべきなのは、「その状態となったときには、コミュニケーションが〈伝える手段〉ではなく〈勝ち負けの場〉となっている」ということです。

伝えることではなく、相手を言い負かす、もしくは自分の主張を通す事が目的となっている場合、一番よい解決方法は土俵を降りることです。

具体的には、次のような言葉で一度クールダウンさせましょう。

「すいません、私がきちんとお話できる自信がないので、5分だけお待ちいただけますか?」
「お互いに冷静に話し合いができる状態ではないと思いますので、後日あらためませんか?

上記のような「勝負の場」になりそうなとき、私は意識をして一歩後ろに下がります

儀式のようなものですが、少しだけ周りを見待たす余裕がでてきます。

役立つ部分も必ずありますのでご参考ください。


3 怒りは吐き出せばよい

アンガーマネジメントにおいて重要視されているのは「上手に伝えること」です。

私自身、アンガーマネジメントを学ぶ中で、怒りを伝えることと感情的になることは別だと気が付きました。

「怒ってもいいけど、そんな伝え方はする必要ないよね」。

怒っているときは、真剣な顔で、「私は怒っています」と伝えればよいのに、ことさら乱暴な言葉やしぐさで伝える必要はなかったのです。

吐き出し方に注意をしないと、愚痴を言い続けることになります。若いスタッフにもよく伝えますが、お酒を飲んで言う愚痴ほど楽しいものはない。だから、気をつけなさい。それが癖になったら、誰も君の周りに近づかなくなる、と。

もちろん、たまに愚痴を言う程度は、人間ですから少しくらいは良いでしょう。ただ、それが頻回になったとき、私たちはどこにもいけない、がんじがらめになるのです。吐き出すのではなく、上手に伝えましょう。


4 怒りは制御できない

制御できない怒りも存在しますが、ほとんどのものは制御可能です。

制御できないものの代表は「命の危険が迫った状況」です。しかし、現代社会においてそのような場に立たされることはほとんど無いでしょう。

制御できる部分については、また後に詳しく書きますが、主に個人の頂く願望・信念と現実とのギャップに覚える苛立ちや怒りが該当します。少しメタな視点で、自分を眺めることを習慣化できたら、かなりの部分の怒りを制御できるようになります。

私自身もアンガーマネジメントを実践する前は、毎日、会社で怒鳴って過ごすなんてこともありましたが、現在は、そのようなことはめったにありません。

(続く)