――予後予測の指標として、脳画像を利用するきっかけになったのは何ですか?
実は、私がセラピストになって3、4年目ぐらいの時期には、脳画像を見る機会が少なかったんですよ。でも、脳卒中の患者さんを担当していると「どれぐらい良くなるの?」「どこまで良くなるの?」とよく聞かれたんです。
そして「そうですね、半年ぐらいで良くなるんじゃないですかね……」と、何の根拠もないのに答えいてる自分がいまして。言ったはいいけれど、本当に良くなるのかな、無責任なことを言ってしまったのではないかなと、とても心配になることが度々ありました。
「リハビリテーションを頑張りたい。それも、無期限に頑張れる」という人はいないと思うんですよ。もし「10年頑張ります」と答えたとしても、10年続けるというのは実際難しい。短期間だったら人は頑張れるんだと思うんです。
「具体的にいつまでに、これぐらい改善するというなら頑張るよ」と患者さんにも家族の方にも思っていただくために、根拠が必要ですよね。「今は麻痺がこの程度で、意識障害はこの程度だから、いつまでにこれだけ良くなる」ということを、何も見ずには言えないと気づきまして。
なるほど。手塚先生のセミナーの冒頭で患者さんが「どれぐらいで良くなるの?」とたずねるエピソードがありましたね。患者さんが言う「良くなる」とセラピストが伝える「良くなる」には少し認識の隔たりがあるかと思いますが、そういった最終的なゴールや目標期間の設定はどのようにされているのでしょうか。
そうですね。その方その方の人生によって、必要とされるものは変わってきますよね。
たとえると、和式生活の人は床での立ち座りができなければならない。でも、バリアフリーのお家に住んでいる人はそこまでの機能は必要ない。なので、その方の「求める生活にたどり着くためには、これぐらいの期間が必要ですよ」という答えをしようと心がけています。
私には、3か月経ったらこれぐらい、6か月経ったらこれぐらいと、ある程度経過も見えているので、「1か月たったところでは歩行器で歩けるようになりますよ」「3か月たったところでは杖で外まで行けるようになりますよ」「大体半年ぐらいきちっとリハビリテーションすれば、お仕事にも復帰できるし旅行にも行けると思います」と、その人の生活の中でイメージしやすい表現でお伝えするようにもしていますね。
具体的な機会や段階を伝えてもらえると、リハビリテーションされる方も励みになりますね。
そう。イメージがわくから頑張れるのではないかなと。
だから「半年後に旅行に行くために、今日リハビリテーションをするわ」と言ってくださるんだと思います。
なるほど。少しお話は変わるのですが、手塚先生といえば急性期の中枢・呼吸・循環器疾患にについてもプロフェッショナルですよね。理学療法士の方が呼吸について学ぶというのは、一般的に多いことなのでしょうか、少ないことなのでしょうか。
どうでしょうね(笑)。昔は理学療法士の数が少なく、どんな患者さんも担当するということが多かったために、全てを担当できないといけなかったんですよ。
今は急性期病院で、急性期のみ受け持つ人、回復期病院で回復期だけ受け持つ人など、どんどん細分化されている。例えば回復期の人が、呼吸の患者さんや循環の患者さんに会うことは、ほとんどないんですよ。そうなるとやらないでしょうね。
先生の場合は、環境によって必要に迫られてという感じでしょうか。
そうですね。
目の前に困っている人がいたから、その勉強しなきゃいけなかったという(笑)。
(次回に続く)
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