――今まで様々な患者さんと脳画像を診てこられたことと思いますが、中でも難渋した症例と、その時にどう対応されたかというお話をお聞かせいただけますか。
そうですね。比較的一か所でシンプルな脳梗塞・脳出血はスムーズにいくことが多いですが、脳卒中だけでも多発であったり、合わせて肺炎を起こしていたり、骨折していたり、心臓にも問題を抱えていたり……と、問題が複合している場合には、自分の持っているあらゆる知識をすべて総動員してやっと太刀打ちできるという状況に立てるので、非常に難渋します。
今は大概の患者さんを思った通りに良くすることができるようになりましたが、それでもなお、いくつもの障害を抱えている方については中々改善できないこともありますね。
複数の要因があると、一つ一つ取り組むより難易度が上がりますよね。
様々な知識を総動員されて取り組むとのことですが、医師・ナース・ST・OTと、多職種との連携において何か印象的なエピソードはありますか。意見の食い違いや、協力して解決した事例など、具体的なお話があれば教えてください。
そうですね。OTとSTとはよく話をするようにしています。医者や看護師もそうだと思いますが、話をしないと始まらないし、続かないんです。
我々PTは主に足の状態をみて、歩きなどの基本的な動作ができるようにリハビリテーションをしますが、基本的な動きができたからといって、終わりにはならない。歩けるようになっても、その先続けて担ってくれるOTやSTがいますから。PTはPTの仕事だけでなく、患者さんの望んでいることを叶えるために、一緒に目標を目指さなければならないんです。だからこそ、OT、STとは、一緒に話をし、リハビリテーションをし、練習を見せ合うようにしています。そうでないと、食い違ってしまいますので。
あとは、看護師ですね。患者さんを管理しているのは看護師さんですから、リハビリテーションと病棟で方針が混乱しないように、なるべく病棟でリハビリテーションをして見せびらかすようにしています。話だけでは伝言ゲームのように、相手によって捉え方が異なってくるので。
ご講義の中で歩行訓練をされている患者さんの動画がありましたが、あれも病棟の中でのリハビリテーションでしょうか。
はい。あれは、病棟の廊下です。
――もし先生が脳卒中になられた場合、どのようなセラピストになら「診て欲しい」と思えますか。
どんな人ですか。そうですね……逃げない人がいいですね。正面から向き合ってくれる人。「それは僕に分かりません」という人は、気持ちの面で信頼できないんです。だから、分からなくてもいいから「調べてきます」「一生懸命頑張ります」って言ってくれる人の方が「お願いします」「任せます」と言える。
確かにどんなお仕事でもそうですね。あと、本日のご講義の中で特に心に響いたのが「セラピストが未来をつくる」「患者様の未来をつくる」「そしてまた楽観的に見よう」というお言葉なのですが、様々な経験や知識があって、そういったお気持ちになられたというところでしょうか。
そうですね。「楽観的に」はちょっと語弊があるかもしれないですね。
「前向きに」に未来を作っていくのが我々の仕事だと考えています。
患者さん側からすると、どうしても不安になることも多いので、セラピストの先生が前向きに仰ってくださると、リハビリテーションにも前向きになれると思いますね。
たとえ小さなケガであったり、小さな病気だったとしても、その人にとっては一大事だと思います。
(次回に続く)
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