(文責:張本 浩平)
2017年9月6日に開催された第146回「介護給付費分科会」の資料が公開されました。
注目するべきは、資料3の公益社団法人日本理学療法士協会・一般社団法人日本作業療法士協会・一般社団法人日本言語聴覚士協会の提出資料と、資料4の公益社団法人日本リハビテーション医学会・一般社団法人日本リハビリテーション病院・施設協会・一般社団法人日本訪問リハビリテーション協会・一般社団法人全国デイ・ケア協会の提出資料です。
同じリハビリテーション関連の団体でも、立場が微妙に違うために、自ずと主張する内容も異なってきます。
介護保険改定のスケジュールですが、最初に論点などを取りまとめる会議があり、その後に関係団体のヒアリングを行い、もういちど論点を議論し、改定に落とし込む――という流れで行われます。これは大体、12月までには大まかな方向が定まり、3月くらいまでに点数が決定するスケジュールです。
ちなみに直前で決定することもよくあり、現場の管理職には不安で心臓を鳴らす日々が続いています。 今回は、資料3の示している意味を私なりの解釈で説明いたします。
厚生労働省の会議資料は基本的に、提出された時点でほぼ方向性は決定していると思われます。事前の調整会議や水面下での交渉などで、落とし所はある程度の幅をもっているのでしょう。余程の強い何かの力が無い限りは、その振幅の範囲内で決着されるはずです。
(画像引用:厚生労働省 第146回社会保障審議会介護給付費分科会資料)
さて、資料3のP.1は
リハビリテーションの目的 リハビリテーションは、心身に障害を持つ人々の全人間的復権を理念として、単なる機能回復訓練ではなく、潜在する能力を最大限に発揮させ、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を可能にし、その自立を促すものである。
としています。これは、よい定義がされた目的だと思います。
リハビリテーションの日本語訳を全人的復権か全人間的復権かで少し意味合いが変わります。人間は人⇔人であり、「人と人との間」を指す言葉です。その一語で、すでに社会性を含んでいます。
P.5では、社会参加支援に関する議論が行われています。「訪問リハ事業所では屋外の活動が認められているのだから、訪問看護ステーションからの訪問リハ(以下訪問看護Ⅰ5)でも認められるべきではないか」という解釈がなされました。
(画像引用:厚生労働省 第146回社会保障審議会介護給付費分科会資料)
訪問リハ関連の法律は、このように整合性が全く取れていないものが沢山あります。
現場に近い人間としては、法制度に人間を合わせるのではなく、人間が幸せになる法律の運用を目指して欲しいと心から希望しています。
ちなみに、訪問看護では屋外活動は基本的にできません。【介護保険法第八条…「訪問看護」居宅要介護者について、その者の居宅において看護師その他により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助】という法律があるためです。
以前、当ステーションにて「屋外活動がどうしても必要である」と判断した利用者さんがいました。このケースでは、市役所と交渉して、屋外活動を限定的ながら認めてもらえました。
臨床に携わる方は、同様の経験をされたケースがあるのではないでしょうか。毎回の交渉は、多大な連絡・交渉コストを要するので、今回の議論によって何とか認められて欲しいところです。
P.19には、訪問リハビリテーション実務所研修会の参加人数の資料がありました。
(画像引用:厚生労働省 第146回社会保障審議会介護給付費分科会資料)
私事ではありますが、何年前になるのか、10年以上前日本理学療法士協会の業務推進部の部員をしているときに、この実務者研修会の前身となる研修会の立ち上げに関わりました。ここまで参加者が増えたかと思うと、たいへん感慨深いです。
思い出すのは、3日間の研修会が終わったあと、ひとりで会場の片付けをしているときに、「誰かの役にたった」という自分だけの満足感を感じたことです。 誰も見ていなくても、自分の評価は自分で決めればよいとのだと爽やかな気持ちで思いました。
話が逸れました。今回触れなかった資料3についての記事は明日アップ予定です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
(次回へ続く)
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