第11回 後編:自ら可能性を狭めず、患者さんと深く積極的に関わっていく。互いの道を切り開くリハ【みえ呼吸嚥下リハビリクリニック 院長・医師 井上 登太 先生】


――先生がこれまでに難渋された症例、そして如何に対応・解決されたかを教えてください。

毎年25~50名の看取りをしていますが、呼吸不全、嚥下障害の方に関わると、今後の経過がおおよそ見えてきます。それは、ターミナルケアだけでなく、人生の最期につながっていますね。結局、すべて負け戦です。それでも、どの方の時も、看送ったのち自分の手を見つめながら「自分に知識と技術があれば」と考えます。どの症例でも悩んでばかりです。

――最後に、医療・介護に関わる皆様に贈る言葉をお願いします。

私は、優れた師と仲間に恵まれてきました。その多くは、医師ではない様々な医療介護職の方です。コメディカルスタッフに育てられたといっても過言ではありません。多職種連携に対する不満を述べる方もいらっしゃいますが、是非お互いに理解しあい、関わりあい、成長していってください。

「コメディカルスタッフに育てられた」ですか。とても嬉しい言葉をありがとうございます。あらゆる場面で、多職種連携を生かした、患者さん・利用者さんのためになるケアを提供していけるといいですね。

ほか、先輩に当たるスタッフでなく、若手のスタッフに伝えたいメッセージはございますでしょうか。

若い仲間もたくさんいます。けれど、時折、患者さんに対する真剣さが少ないのではないかと感じることもあります。自分たちが関わる範囲を、不必要に狭めているように見えるのです。

なるほど。つい、一線を引いた関わり方をしてしまうという感じでしょうか。自ら可能性を狭めず、積極的に多職種や患者さんと関わってお互いの道を拓いて頂きたいですね。

今でも目を閉じると浮かぶ光景があります。

待合室で急変した子供の親御さんに頭を下げる医師と、兄弟を救うために自分の身を投げ出した患者さんの死について、泣きながら頭を下げて説明する医師。どちらも私の指導医でした。

責任の有無の問題ではなく、患者さんのために苦悩しながら最後まで人として付き合うその姿を、今でも思い出して奥歯を噛み締めます。

(了)


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