【後編】熱傷、気道熱傷患者のリハビリテーションの実際

2.1熱傷の病態

①急性期:受傷後48時間以内は、熱傷による全身の炎症反応が起こり、ショック状態となっていることが多いです。血管の透過性が亢進することで高度な脱水になりますから、尿路を確保した上で、適切な補液を行わなければなりません。また、熱傷部の水疱に高度な緊満が生じることもあり、皮膚切開を加えて減圧することがあります(減張切開)。気道熱傷の場合には速やかに気管挿管や気切をして人工呼吸器管理を行います。

② 利尿期:48~72時間以内を利尿期と呼び、脱水状態が徐々に改善し、尿量が増えてくる頃です。全身の炎症反応は続いたままですが、ショック状態は回避できるでしょう。しかし、熱傷部の感染兆候が出てくることもあり、適切な治療を開始する必要があります。気道熱傷では、気道内の感染に注意しましょう。

③ 感染期:72時間以降は感染期と呼び、2~3か月続くことがあります。熱傷部は非常に細菌感染を起こしやすく、見逃したままではすぐさま敗血症になってしまいます。この頃には、循環動態は安定してきますから、補液や尿カテーテルなどの見直しを行います。植皮は循環動態が安定し、感染症状がないときに行うのが最適です。


2.2熱傷リハビリテーションの実際

熱傷患者のリハビリテーションは、受傷後早期から行われます。利尿期まで時期には、全身状態が悪く積極的なリハビリテーションは難しいですが、廃用症候群や血栓症を防ぐためにベッドサイドでの関節可動訓練を行うべきでしょう。感染期に入り、徐々に全身状態が改善してから、関節拘縮の予防や嚥下、発語訓練などの積極的なリハビリテーションが進められます。しかし、全身状態は日々変化するものであり、一筋縄でいかないことが多いのが現状です。特に熱傷患者にとって感染症は命取りになります。無理をしないで確実にリハビリテーションを進めることが重要です。さらに、熱傷患者は治癒後にもリハビリテーションを必要とし、長い人では数年を要する場合もあります。


熱傷患者の管理は医師、看護師、リハビリテーションに関わる全てのスタッフが一丸となって行うものです。

特に、リハビリテーションスタッフは長い時間、患者と接する機会がありますから患者の状態変化があったときには早急に他のスタッフに知らせるべきです。そのためにも、リハビリテーションに止まらず、患者の全身状態を正確に把握しておく必要があります。

(文責:医師 成田亜希子)

国立大学医学部を卒業後、僻地の医療に従事。一般内科医として多くの患者さんを診療。

衛生研究所での勤務経験もあり、細菌学や感染症にも精通しています。

二児の母でもあり、仕事と育児に奮闘中。


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