吉尾先生と増田先生を見ていると、燃料型と火付け型に役割が分担されているように感じます。燃料型の増田先生が、ファイアスターターの吉尾先生と出会い、現場で燃え続けることができた。そこで、「部下の育成論」をうかがいたいです。実は僕もファイアスターターになりたいんですけど、部下を萎縮させるばかりで。
それはたぶん自分が悪いんですよ(笑)部下は怒られて萎縮しているのでは。
やはりそうなんですかね。部下に聞いても「会議では、ちょっとビビッてます(笑)」と答えていました。僕は、部下に火をつけたいと心底から思っているのですが、増田先生は、どのように行動されていますか?
いいえ。そこは特に何かを指示することはないですね。「あるがままの関係性」を大事にしています。今、現場で後輩と接するときは「率直」です。あるがままの関係性を大事にする素地を、もともと持った人間だけが、理学療法士としてやっていけるのだと思います。いつ何が起こるかわかりませんし、結局は人と人とが接する職業だと思うので。真心をこめて丁寧に接することが、この仕事では絶対に必要なことだと思います。
なるほど、その通りですね。
英語の文献をたくさん読んで、様々な研修に行って、学会で数多くの発表する人が、必ずしもよい理学療法士とは限りませんよね。自分の知識を、目の前にいる障害を持った方々に還元できなければ意味がないです。うちのような若いスタッフが多いところでは、私は立場的にかなり上位です。でも、ベテランだからといって完璧に仕事をこなせるわけではなく、ずっと葛藤し試行錯誤しています。そんな私を見ながら、「葛藤しながらやっていけばいいんだ!」と、若い部下たちに思ってもらえたらいいですね。
キャリアを積み重ねてもうまく立ち回れるわけではないと、そんなことを言ってくれる人は、なかなかいません。本当はさまざまなノウハウをお持ちなのでしょうけど、ノウハウを手にするには、いろんな苦労をしなくてはならない。
今の自分の知識やスキルがあったら、あのときの患者さんにもっと色々できたんじゃないか、と。後悔はないほうがいいのでしょうけど、後悔を通して覚えていきますよね。
1年目の自分が前にいたら、殴ってますよね(笑)
殴ります(笑)。でも、至らなかった理由もわかる、そんな逡巡ばかりです。
少し聞きにくい話ですが、扱いづらい部下や後輩がいます。燃料型で、火をつけたら一気にスキルアップしていく人と違う、どうしてわからないの? という不完全燃焼型のタイプです。燃えづらいのは知識や技術が不足しているからではなく、患者さんとの向き合い方の問題かと僕は思っているのですが、そんな部下で苦労したことはありますか?
あります。けれど、自分の感覚が全てではないですし。最近は違う職種を経てから理学療法士になった人がたくさんいます。資格ありきでなったのかな? と思う人もいて、違和感を覚えることはしばしばです。でもまあ、私だって最初からモチベーションが凄く高かったわけではないので、なんとも言えません。
仕事をする中で少しずつですよね。
やっぱり、結局は「人と人」だと思うんです。違和感を覚える理学療法士がいても、その人を良いとおっしゃる患者さんはもちろんいます。だから「理学療法士として、私の感覚ではこの人を受け入れがたいけど、全ての患者さんにとって良くないかというと、そうではない」と思い直すようにしています。
(次回へ続く)
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